第6章 ディープグラウンドの逆襲
意識を取り戻したヴィンセントが目にしたのは、見慣れない天井。シャドウフォックスは以前にリーブと乗ったことが
あるんだから分かりそうなものなのに、少し頭もぼーっとしているんでしょうか。そして見慣れぬフードをかぶった人物。
「ここは…? あんたは?」と警戒心のないヴィンセント。具合悪くてそれどころではないのかも。起き上がらないし、
幅の狭いソファからだらりと垂れ下がるままにしている右腕が、それを証明している気がします。何と言っても銃を使う
腕に力入れてないし。普通なら見知らぬ相手を警戒して、グリップに手をかけていそうなものですから。
風変わりな自己紹介で、冒頭からきっと正体は分かっていたのでしょう。そして、忍者の彼女がバランス崩して頭
ぶつけても、大丈夫と思っているのか大して心配しません。「で、ここは?」と淡々とした対応が、むしろ仲間に対する
気安さという感じがします。挙句、「久しぶりだな。<頭>は大丈夫か」とユフィをさりげなくからかったりして。
いいですね〜!今までのヴィンのイメージが大分変わった原因のひとつです。
そして、今度は助けてやったから感謝しろという彼女に、「そうか。感謝するよ。ありがとう」
うっひゃー!!
この「感謝するよ。ありがとう」という言い方が、めちゃめちゃ柔らかくて鼻血ものです。ユフィも慌てる柔和さ。
オトナの余裕も感じます。そして、仲間との関係の良さ、そこそこユフィを可愛がっているというのも、何となく伝わって
きますね。ここも、コントローラーを取り落として、画面の前で無意味に踊ってしまったシーンです(笑)。
無造作に起き上がろうとして、傷の痛みに呻くヴィン。慌てたユフィに、胸に穴があいてたんだから無理するなと注意
されるまで、その事実を知らないって…。ロッソにあれだけやられたのを忘れてるのかなあ。
それに エンシェントマテリアが自分の体内にあって、それを抜き取られたことも分かっていないし…。彼は自分が
怪我することに相当無頓着らしいです。何より、胸に傷があるのによく起き上がれるなあ。細いけど腹筋すごそうです。
「死んだかと思ったけどみるみる傷が治ってた」「相変わらずっていうか、前にも増して便利な身体している」とユフィ
の言葉は、マテリアを失ってカオスが暴走しやすくなっていることを暗に予言してます。
傷の治りが以前より早くなっているというのは、カオスの力が強まっているのでしょう。
それに、このユフィの台詞は人ならぬ身であるヴィンセントを、仲間たちはまるごと受け入れていたということも暗示
しているように思えてなりません。そうでないと、ユフィがただ無神経な発言をしたということになってしまいますし。
(しかし、人の握りこぶしが入るくらいの大きな穴が開いた胸と、それがみるみる治る過程を平気で見ていた彼女も、
かなり豪胆です)
WROにヴィンが目覚めたことを連絡するユフィ。「よかったあ〜」と安堵するリーブ。
そういえば、ヴィンは出かけるたびに倒れて帰ってきていますねぇ。エッジからはシャルアに連れて帰られるし、ニブル
ヘイムからはユフィに、だし。もしや、リーブはこれを予測してユフィをニブルヘイムに派遣したのかしら。
「手のかかる人」ぶりを発揮するダークヒーローでした(笑)。
通信後に喋りまくるユフィをよそに、物思いに沈むヴィンセント。ベンチに身体を伸ばしたままのところをみると、まだ
本調子ではないようです。
WROに戻る途中で襲撃を受け、またもやシャドウフォックスは故障。徒歩で山道を超え、途中のDGソルジャーやら
虫やら飛行機やらを倒しながら本部にたどり着きます。っていうか、病み上がりなのにユフィは付き添ってくれないの
かしら。それとも、だから行動ペースが遅いとかって、置いていかれちゃったのかな。
彼を迎えたのは目覚めたシェルク、魔獣と化したアスール。ツヴィエートであるアスールの監禁の仕方には、難が
ありすぎましたね。あれじゃ目が覚めたら暴れだすに決まってます。戦おうにもまったく歯が立たず、退却を強いられる
ヴィンセントとシャルア。ひとつ気になるのが、シェルクとアスールが長話をしている間中、ヴィンは寝っ転がっていたん
でしょうか。シャルアに指示されてから起き上がってましたけど。
非常扉の前でシェルクが抵抗したため、シャルアは自分の義腕を閉まりかけるドアに挟んで時間を稼ぎます。ヴィン
は真っ先に扉を駆け抜けるけど、これは前方の敵を倒して退路を確保するためか何かだと思いたいです!
そして、振り返ると二人がまだ来ていないので、慌てて駆け戻って扉を開けようとします…が、このでかい扉を彼の
細腕ではちょっと無理でしょう〜。
この扉、廊下側にはスイッチないのかしら?(そうしたら見せ場がなくなってしまいますが)。
シャルアは腕を挟まれているから内側のスイッチに手が届かないと思うけど。シェルクがちょいとスイッチ押してあげれば
いいのに。それとも使用は1回きりの破壊錠ですか?
シャルアはドアの隙間からシェルクを押し込み、「ヴィンセント、この妹を頼む」。
そして、シェルクに「助けられなくてごめん。生きていてくれてよかった」と言うと、妹を護るために犠牲になってしまいます。
(涙)
目の前で閉まる扉。弾け飛ぶ義腕。必死で扉が閉まるのを留めようとしていたヴィンセントは、表情を歪めて両拳で
思い切り扉を叩きつけます。彼にしては珍しい、激情の迸り。ルクレツィア、エアリスに続いて、三人目ですね。自分が
そばにいたのに、護れなかった…。
衝撃音に次いで、ドアの隙間から流れてくるオイル。内臓の大部分が人工物になってしまっているシャルアの血液。
無言でそれに目を落としたヴィンセントは、無理やりふっきるようにシェルクの手を引いて走り出します。お姉さんから
託されたのだから、シェルクは護らないと。
WROは大きな痛手を受けていました。廃墟のようになってしまった司令室で座り込んでいるリーブ。
「ジェノバ戦役の英雄」ともてはやされてもこのザマだ。情けない、と珍しく落ち込んでいます。
目の前でシャルアを犠牲にしてしまったヴィンセントにしても、それは同じ。でも、彼はへこんでいません。
「それで?」と淡々とリーブに問いかけます。「お前はここで止まるつもりか」(私はそのつもりはない)と、非常に前向き。
リーブのそばにしゃがみこみ、相手を見つめて「時を止めた私に、前へ進むことを教えたのはお前たちだったんだがな」
これ、すごい!!
ヴィンってこんなに強い人だったんだ! 前のイメージだと、シャルアを救えなかったのは私の罪、とか何とか言い出し
そうだけど、そんなに女々しくありませんでした。あっぱれ。
もしかしたら、ヴィンが弱さや甘さを見せるのはルクレツィアに関してだけなのかも知れません。
「ヴィンセント…」とリーブが呟いたあとの表情。瞳の揺れ具合が、言ってしまった自分に対してちょっと照れているよう
な、でも主張は曲げないというような微妙な彼の心理を表現しているように思えます。このあたりが繊細なんですね〜。
エッジの少年相手のエピソードの時も感じたのですが、相手の目線に合わせるために腰を屈めるくらいはよくしますが、
しゃがむまではあまりしないと思います。これって彼の優しさをよく表しているように思いますね。
まあ、長身だからそうしないと話がしにくい、とか、同じフレームに入らないという事情もあるかもしれませんが(笑)
メディカルルームに行くと、魔晄ポッドにシャルアが入れられています。そばで落ち込むユフィ。脳に損傷があり、奇跡
でも起きない限り目覚めない、とのこと。悲しみのあまり、側にいて何をしていた、とヴィンセントを責めてしまいます。
それにはさすがにうなだれて「すまない…」というしか術を知らないヴィンセント。
言い訳をしないあたりがこの人の強さなんでしょうね。全ての責任を自分で被ってしまう。
対応困難な状況であったとしても、他の可能性を見出せなかった、もしくはその困難な状況に陥ってしまったことまで
全て含めて、自分の責任と受け止めてしまうような気がします。
ユフィも冷静さを取り戻し、謝りますが、辛い会話です…。
そこへ入ってきたシェルク。「バカな人」と呟いた彼女に、激怒したユフィが平手打ちを見舞います。
ここのヴィンがちょっとおろおろ気味なのが面白い。
でも一応年長者らしく、いきり立つユフィの肩をそっと押さえてたしなめます。このシーン、シェルクの影になってしまって
いるのでヴィンの顔は見えないのだけど、どんな表情していたんでしょう。ユフィは悔しそうにしながらも、彼の制止を
受け入れます。
ユフィが出て行った後も、混乱しているシェルク。
10年もDGとして生活していた彼女には、欠落してしまっている情緒があり、姉の愛情がわからない。何故、命をかけて
まで他人を護るのかが理解できない。
その彼女に、ヴィンセントは訥々と語ります。エッジで会った時、一人で、自分の命と呼ぶシェルクを探していたこと。
自分は彼女本人ではないので、正確には分からない。しかし、人は誰かを守るために、本当に大切なものを護るために
命をかけることができる。それが「人」なのだろう、と。
これ、実はDCのテーマなんじゃないかと思えてなりません。ラストのカオスヴィンが「世界を救うとしよう」というのに、
繋がるように感じてしまいます。「しかたがない」とつけるのは、照れなのか、「自分は人ではなくなってしまったけれど」
ということからなのかわかりませんが。
それはさておき。
でも、自己否定と罪悪感だけで留まっていないのが、DCヴィンセント。自分の周りには、理屈抜きで飛び出して誰かを
助けるお人好しばかり、と、ちょっぴり仲間自慢? ここも新たな発見でしたね。そんなに好意的に思っていたんだ。
仲間の中にいても馴染めず、孤高でいたのかと思っていたら、案外仲良しだったんだねと、かなり安心した場面でもあり
ます。(公園デビューしたわが子がお友達と仲良くできるか心配する親の心境にちょっと似ているような…)
シェルクは「あなたも…」と言いかけますが、よろめいてヴィンに支えられます。これ、「貴方もお人好しのひとり」と言い
たかったんじゃないかな。
ヴィンと接触したせいか、ルクレツィアの断片が反応します。突然現れる過去の映像。
「護衛さん?」と優しい声で呼ばれ、昼寝中(!)のヴィンセントがうっすら目をあけると、そこには美人の研究者の顔が。
驚いて跳ね起きるあたりが、年相応の若者らしくていいですねえ。これ、昼寝を見つけられたから驚いただけじゃない
ですよね?相手がルクさんだったからですよね〜? 時間帯としてはお昼休みらしいし、(でも護衛は無休なのか?)
ヴィンのぼけはこの辺から健在だったようです。でも、今のヴィンセントからはちょっと想像つかないですが。風が気持ち
いいからってお昼寝(^^)。要するに、平和でヒマで退屈だったんでしょう。(笑)
この時期はまだ出会って間もないようで、ヴィンがルクさんに敬語を使っているのが初々しくていい。
「昼寝していて護衛がつとまるのか」「そこは私の指定席」とからかったあげく、「一緒に食べる?」とお弁当を見せるルク
さん。罪作りですね〜。これ自分から仕掛けちゃってませんか?「あの人の息子」だから深入りしちゃだめなんじゃない
ですか?お互い一目ぼれというところなんでしょうかね。きっとこの後、二人で仲良くお弁当を食べたんでしょう。ワインに
バケット。おかずは何ですか?
赤面しちゃうようなラブラブなシーンを見ちゃったシェルク。この間、転びかけたシェルクの両肩を支えたままの姿勢で
ヴィンも固まっています。この映像はヴィンセントも見ることが出来ていたようで、彼もしばしフリーズしています。
突然現れた敵と、自分のプライベートな情報を共有しちゃうっていうのも複雑な心境でしょう。
そもそも、この時点ではヴィンは何故シェルクがそんな情報を持っているか知らないのだから。
そして、シェルクにとっても、目の前の無愛想な男の、あんなに可愛いシーンを見てしまったら、なんだか見る目が変わって
しまうのでは。くれぐれも失笑しないように(笑)
映像が消えた後背を向けたシェルクに、もの問いたげなヴィンセント。しかしそこへリーブがやってきます。
「貴方の言うとおり、立ち止まっている時ではなかった」って、リーブも偉い!そして、仲間同士の絆の強さを見せられた
気がしますね。
ヴィンが集めてきたオメガレポートは不完全なものだったらしく(ルクさん、「詳しい資料」って言ってたのに…やっぱり
ヴィンが壊したのか)他のデータと合わせないと意味がない。そこでシェルクが突然協力を申し出ます。
これは、欠損したデータを埋めるためもあるでしょうけど、さっきの映像をヴィンと一緒に見てしまったことで、ヴィンセント
への好意というか協力する意思というか がわずかに芽生え始めているようにも見えます。ヴィンにとっても、シェルクは
ルクレツィアにつながるリンクケーブルということで、無視できない存在になっていきます。
そこへ、ユフィの切羽詰った声の放送。「外、外!」って言われて出てみると、なつかしのシエラ号です!!
ムービーのシドがめちゃくちゃカッコいい! いや、ACでもカッコよくて惚れ惚れしましたが、今回は飛空艇師団を引き連
れてますますすてき〜。
そしてさすが艇長。覇気と根性の塊です。ヴィンもリーブといっしょくたに、「何ぼさっとしてるんだ!」と喝を入れられ、
事態は新しい展開へ。